原発事故で故郷を追われ、情報を隠され、「原発反対」と声をあげたら悪者扱いされる。こんなにひどい話がどこにありますか?(信州大学・新井智子さん)

22日の秘密法やだねデモでの信州大学・新井智子さんのメッセージの要旨を紹介します

 

みなさんこんにちは。信州大学の新井智子です。私の出身は福島県です。高校 2年の 時に原発事故で被災しました。今日は、フクシマで被災した話とともに、秘密保護法反対を訴えます。

 

今になって強く感じる放射能への不安

私の実家は、第一原発から 15 キロ、第二原発から5キロ南の楢葉町にあります。

楢葉からいわき市の小学校へ避難して2日目の2011 3 14 日、私と母は衣類を買いに、避難所から 40 分ほど歩いて買い物へ行きました。その帰り、のどが渇いたので、近くのコンビニへ寄ってアイスを買い、駐車場で2人で食べていました。 第一原発3号機が爆発したのはそのときでした。 コンビニの定員さんが店のシャッター を閉めはじめたので、「どうしたのですか」 と聞くと、「原発がまた爆発したんだよ、早く帰ったほうがいいよ」と言ったのです。

急いで避難所へ戻りましたが、それまでにどのくらいの量の息を吸っただろうと考えると 、怖くてたまりませんでした。

 

 震災から一か月もたたない4月上旬、楢葉町が警戒区域になる前、立ち入り禁止になる前に、私は一時帰宅 しました。高校の制服や教科書などを取りに戻りまし た。

 震災から一年聞は、私は福島県いわき市で一人で暮 らしました。そのときは水道水やスーパーの野菜など、放射能のことは特に気にせず食べました。

でも今になって、これから癌になったらどうしようとか、将来自分の子どもは元気に生まれるだろうか、と思うようになりました。

 

ただでさえ原発の情報は隠されている

政府が無理やり制定した秘密保護法は、原発からどのくらいの放射能が、どの方向へ、どの地域に漏れているかという情報を隠すことができます。 原発がどうなっているのか、私たちは知ることができなくなってしまいます。

さらに原発の情報を調べようとするだけで、私たちは逮捕される可能性があります。また、原発はもういらないと 、このような集会で声を上げるだけでテロリスト扱いされてしまうのです。

 

ただでさえ原発の情報は隠されています。福島第一原発一号機は、2011 3 11 日の 地震発生から 16 時間までにメルトダウンを起こしていました。この事実を東電が明らかにしたのは2 か月も経過してからでした。

また、原子力災害時に搬す性物質の拡散状況を予測する SPEEDI のデータを、政府は、 福島県民はじめ、国民にはすぐには公表しませんでした。それを知らされずに線量の高い地域に避難 し、避けられたはずの被爆をした被災者もいるのです。

 

私は、安全なところに安心して暮らしたいです。私は自分のふるさ とや福島原発が、どうなっているのか知りたいです。新潟の柏崎刈羽原発や静岡の浜岡原発やは安全なのか、どのくらい放射能が漏れているか知りたいです。ここ長野に住み続けても大丈夫かどうか知りたいです。

 

原発事故でふるさとを追われ、健康を脅かされ、声を上げたら悪者扱い?

自分の命にかかわる情報を手に入れたいと思うことはおかしいでしょうか。 私たちの命を脅かす原発はもういらないと 、声を上げるのはいけないことですか。

 

私たち被災者は、原発事故でふるさとを追われ、健康を脅かされました。精神的な苦痛は計り知れません。「お墓に避難します」と言って、自ら命を落とした人までいるのです。 いまも 多くの人が避難生活に不満を抱えて生活しています。

 

しかし、政府は原発の再稼働や海外輸出に躍起になっています。エネルギ ―基本計画では、「原発は重要電源だと 、これからも原発を維持していく方針を示しました。そして次は何だと思ったら 、この秘密保護法です。原発事故の被災者になり 、原発反対だと訴えたら悪者扱いにされる、こんなひどい話がどこにありますか。

 

私は秘密保護法に強く反対します。安倍政権を許せません。今の政府は、すでに国民の声を無視して、民主主義のかけらもありません。

 秘密保護法が施行されたら 、この日本は崩壊すると思います。いま 、みんなで声を上げて秘密保護法を撤廃させましょう。

 

学問の自由も脅かす秘密保護法は撤廃させよう! 

そして今日はもう 一つ、伝えたいことがあり ます。私は自分と同じような年代のみなさんと一緒に、日本の社会や政治、経済について考えたいです。若い世代の人たちが社会の出来事に目を向けるのは、とても大切なことだと思います。自分が暮らす社会ではいま、何が起 こっているのか、自分はどんな社会に暮らしたいのか、そして、理想の社会にするためになにができるか、そういうことを私たちがもっと積極的に考えて、行動していくべきだと思います。

 

 今回の秘密保護法は、学生にも影響を及ぼします。政府に都合の悪い内容であれば、歴史の資料だって見られなくなり 、科学の実験さえできなくなることもありえます。好きなことを勉強したい、研究したいという学聞の自由が奪われてしまうのです。

  

私は、安全な社会に安心して暮らしたいです。大学では好きなことを自由に学びたいです。今の安倍政権のもとでは、そういう普通の生活ができなくなっています。その原因のひとつが、この秘密保護法だと思います。私は秘密保護法反対を訴えます。みんなで一緒に声を上げていきましょう。