若い世代が中心に、世代を超えて「秘密保護法はいらんに!」(特定秘密保護法の廃止を求めるあちの会)

長野県の南端、下伊那地方の岐阜県境にある阿智村(人口約六千七百人)。山合いにある静かな小さな村で、安倍政権の戦争する国づくりに若者たちが「黙ってはいられない」と声をあげ、前村長、元村議などがよびかけ人になって秘密保護法廃止をもとめる運動が広がっています。

 

 

若者たちの姿に励まされ

Iターンの若者たちがすごいバイタリティなんです。イヤなものにはイヤと言ってすぐに行動する。そんな姿にとっても励まされて。だから、できる限り力になりたいんです。高齢化率31%の村で生き生きと活動する若者たちは村の未来への希望なんです」と話すのは、「特定秘密保護法の廃止を求めるあちの会」の事務局の原佐代子さん(67)です。

事務局長の絹田晧士さん(29)は京都から就農を求めたIターンです。絹田さんは話します。「Iターンは日本社会のありかたに疑問をもっている人たちなんです。そんなIターンの若者たちをあたかかく迎えいれてくれるのが阿智村です」。

 

「会」がとりくんだ企画ではこんな場面がありました。Iターンの若い男性が元村議(無所属)でこの6月で90歳になる平野嗣子さんの手をひいて参加。平野さんは「私はもうなにもできないんだけどせめてこれだけでも」と言いながら一万円の「会」への募金を差し出す姿に、受付をしていた人たちは胸が熱くなったそうです。

 

自分の生活とのかかわりで、「反対」の思いを伝えたい

「特定秘密保護法の廃止を求めるあちの会」は、秘密保護法の強行採決の昨年12月6日に「認めるわけにはいかない」という若者たちのよびかけに翌日7日、7人が集まったことが発足のきっかけです。19日現在、6人のよびかけ人と43人の会員で構成され、4回の学習会や対話・署名活動、オリジナルの看板やグッズでの宣伝などにとりくんできました。

事務局次長の大石真紀子さん(31)もIターンの村職員。「自分の職業や趣味、生活と関わりを学び、いかに自分の言葉で、この法に反対しているんだということを伝えられるか。1人1人が反対するにいたったプロセスを見せることが大事なのではないか」と言います。

 

満蒙開拓の悲劇の歴史が刻み込まれた村

19日は、よびかけ人でもある前村長の岡庭一雄さんを講師に「特定秘密保護法と地方自治体」の学習会にとりくみ、55人が参加しました。阿智村には満蒙開拓団の悲劇の歴史が刻み込まれています。戦争の悲惨さと平和の尊さを次世代に語りつぐ拠点とすることを目指す満蒙開拓団平和記念館が昨年4月25日にオープンし、来館者が三万人を超えました。約27万人にのぼる満蒙開拓団のうち長野県は全国最多の3万3000人。特に阿智村のある飯田・下伊那は8300人余と県内最多です。校長の指示のもと担任の先生が説得し青少年義勇軍となった生徒も含まれていました。岡庭さんは「『幸せになれる』という国策のもとで、正しい情報が知らされないまま渡った満州で待っていたのはソ連侵攻と死の逃避行だった」「国の言う通りに追随していたら、自治体は、戦争荷担の、侵略の先兵になってしまう。それが満蒙開拓団に多くの人々を送り込んだ長野の村々の教訓だ。自治体は住民のためにどうしたら良いのかを一生懸命に考えなくてはいけない」と話しました。

 

身近なところから声と行動を広げたい

学習会後の懇親会では、村おこしや村をあげた福島の支援活動の先頭にたっている市川勝彦さん(61)より、「もっと地域に出て行く必要があるんじゃないか、子育て世代向けにカフェで憲法を学ぶような場があって良いんじゃないか」という提案があり活発な意見が交わされました。市川さんもIターンで若者たちのよき相談相手でもあります。

阿智村に生まれ、村で就職した25歳の事務局の男性はこう言いました。「自分の職場の机の前の人が行動的な人だったからこうやって自分も活動している。出会いって大切ですね」