信州大学経法学部「憲法学講義」での講演(安保関連法に反対するママの会信州・山本妙さん)

上田市からきました、山本ともうします。

私は、本来ならこのように壇上でお話するような人間ではありません。

大学の先生でもなければ、学者さんでもありません。ふつうの主婦で、おかあさんです。

今日も夕飯を作ってからここへきました。

私には男の子と女の子の双子がいます。この春に入学したばかりの、小学一年生です。

来月で7歳になります。

私自身は大学生を経験したことがないので、こうして大学という場所自体に足を踏み入れたことも、実は今までありませんでした。なので、とっても緊張しています。

みなさんは、この信州大学で大きな目標のために学ぼうと、もしくは、目標を探すために学ぼうとされて、勉強されてここまでこられたんだと思います。本当にすばらしいことです。今回、ありがたいことに成澤先生から私にお話をいただいたときに、そんなみなさんに、私のようなふつうのおかあさんが何をお話しできるのか、とかなり悩んで考えていました。

でも、私、いくら考えてもお恥ずかしいことですが、本当にむずかしい言葉やむずかしい話はできないんです。

なので、私は、ふだんのおかあさんの言葉で、いつも子どもたちや家族に話すようにお話させていただこうと思っています。お聞き苦しい点などあるかと思いますが、ご容赦ください。

ただひたすら自分の子どもたちの将来をまもりたいから

まず、今回お話ししたい、安保法制のことです。みなさん、どのくらいこの法制についてご存じでいらっしゃいますか?

 

 私は、去年の今頃までは全然何のことなのか、ぼんやりとしかわかりませんでした。

それよりまだまだ手がかかる子どもたちとの日常生活が忙しくて、政治のことはもう全然触れる機会すらありませんでした。まわりにも、そんなお母さん達ばかりでした。

そんな私がいま、長野県内のほかのお母さんたちと「安保関連法に反対するママの会信州」としてデモやスタンディングアピールで、プラカードを掲げて路上に立ったり、勉強会をしたり、国会議員さんと座談会を開いてお話を聞いたりしています。

それはなぜか、というのは、私のほかに活動しているおかあさん達もおなじですが、ただひたすら自分の子どもたちの将来をまもりたいから、という気持ちから、それ以外にありません。

おかあさんは、命がけで子どもを産みます。私も、双子の出産は一昔前では母も子も命の危険がありました。そしてその生んだ命を、人間を育てていくのがどんなに大変なことなのか、身をもって実感しているところです。みなさんも、おうちでお母様に聞いてみてください。

どんなに大変でも自分の体がしんどくても、自分の子どもたちが心もからだも健康に育つことが、何よりも幸せで、うれしいんです。

そんな私たち母親にとって、何がいちばんつらいことなのかというと、自分より先に子どもが死んでしまったり、不幸になることでしょう。私自身も、想像しただけで怖くて悲しくて涙がでてしまいます。 

 

70年前のおかあさんたちは、だまっていることでしあわせになったんだろうか?

 私は、ずっと政治には無関心でした。難しい話だらけでつまらない、そう思っていました。

でも、そんな政治と、私たちや子どもたちの将来の生活の問題が実は同じ線でつながっているんだと分かって、このままではいけないと考えたんです。

70年前、この日本の国は戦争で負けて、ぼろぼろでした。

おとうさんやおかあさんは子どもたちを守ってあげられなかった。

 

そしてもう二度と戦争をしない、と決めていたはずなのに、3年前の12月、特定秘密保護法が成立したときから、この国は戦争へ再び傾きはじめている、と言われています。

私も、危機感はおぼえていました。けれど、私が何か声をあげたことで、世間や国からいろいろ言われたり、また昔の戦前の日本のようにつかまったりしてしまうと、家族に迷惑がかかるかもしれないと思い、それがこわくて、危ないな、と思っていても何もできずにいました。だけど去年の夏、安保法案反対の声が広がっているのを知って、そんな自分が恥ずかしくなりました。

皆さんと同じくらいの大学生の若い人たちや、私のような小さな子どもをもつおかあさん、そして私の半分も生きてない歳の高校生までもがこんなにがんばって声をあげているのに、私は何をこわがっているんだろう、そう思ったんです。

 

また、70年前の戦争のときにもつかまったりするのがこわくて声をあげられなかったおかあさんたちは、黙っていることでしあわせになったんだろうか、とも考えました。

答えは、もちろん、ノーです。

声をあげずにいたことで、つかまらなかったかもしれない。まわりの人からも非国民なんて言われずに済んだかもしれない。だけど、そんなおかあさんは自分がうんで大切に育ててきた子どもに「国のためにたたかって、人をころして死んでこい。」なんて言って、自分の子どもを死なせなきゃならなかったんです。そして、自分の子どもが、家族が戦争に行って死んでしまっても、その死を悲しんじゃいけなかった。とんでもないことです。

食べるものにも困って、楽しいおもちゃひとつも買ってあげられなくて、最後は爆弾で焼かれて死んでしまうなんて、決して幸せな人生ではありえません。

だとしたら、今なら、まだ間にあう今なら、そんな世の中になってしまわないようになんとかして止められるように、声をあげなくちゃいけないんじゃないか、と思って、いてもたってもいられず活動をはじめました。

 

私は子ども達に、けんかをしても叩いちゃだめだよ、と教えます。ちゃんと謝ろうよ、とも言います。

また、おおぜいで一人を叩いたりしてやっつけるのはいけないよ、とも。

武力でおどして武力を制そうとする安保法の、集団的自衛権のやり方は、おかあさんとしては、どうしても子どもに説明できない、いいことだとは言えないのです。

未来は自分たちでつくっていこう

みなさんのお手元にあるリーフレットは、私自身が、自分の友達やまわりの人にこの問題を少しでもわかりやすく伝えたくて、なぜか話しにくいこの話題を、むずかしい言葉を抜きにしてわかってもらいたくて、気軽に手渡しできるようにと、作ったものです。

こちらの成澤先生にもみていただいて、間違っているところや直したほうがいい点などを教えていただいて、とてもわかりやすいものができました。

 

政治の話はむずかしいし、なんだか話し合いにくいです。だけど、みんな一人ひとりが考えていかなくてはいけない話です。

無関心なままでは、国を動かしている一部の人たちに私たちの生活そのものがいいようにされてしまう。げんに今、そうなってきています。

戦後つくられた日本国憲法の条文を、私は言えません。でも、憲法でまもられている私たちの生活の権利ややさしさは、いつも当たり前にそこにあります。

この見えない空気のように憲法がまもってくれているこの生活を変えてしまわないためにも、政治には無関心でいてはいけないと思います。

 

私がみなさんにお伝えしたいことは、政治の話を遠いものでなく、もっと身近なものにしていきたい、していってほしいということです。

どうか、自分で考えてください。そして、みなさんのまわりの人とも、よく話しあってみてください。

誰かにまかせていいや、とか、つまらないしわからないしなんだかこわいから、私は知らなくてもいいや、とは決して思わないでほしいです。

そして、誰かについていけばいいや、とも思わないでほしいです。

この国のことは、政治も生活もおなじです。決して、政治家の方だけのものではありません。みんなのものです。

誰かを信頼することと、その誰かにすべてを委ねてしまうことは、違います。みなさんが、一人ひとりで、自分や家族や友達を、地域や国が違っても人と人を、みんなが幸せになるにはどうしたらいいだろう、と自分の心で、考えてください。

 

みなさんもいま大学へ通い、これから就職して、家庭をもったり子どもを育てたりするでしょう。

その未来の話を、あかるい将来を誰かが用意してくれるものではなく、自分たちでつくっていく、そんな気持ちでかんがえてほしいと、思います。

(2016年5月19日)

 

※「安保法でどうなるの?」リーフレットのダウンロードはこちらから

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コメント: 1
  • #1

    山本亜希子 (日曜日, 16 10月 2016 04:18)

    母たちの想いを代弁してくださり、感謝です!
    大学生たちの胸に響いているといいなと思います。