「『お国のために戦って死ね』と教えた、戦前の教育の過ちを繰り返してはいけない」ー10・19アクションでの教職員のYさんのスピーチ

高校現場ではたらく教職員の仲間のひとりとして発言させていただきます。

 

私たちは、「教え子を再び戦場に送るな!」をスローガンに、平和でなければ教育はできないし、教育の自由こそが、子どもたちの人権を守る大前提であると信じています。かつて「神の国日本は戦争に負けることはない、お国のためにたたかって死ね」と教えた、その過ちは二度とおかすまいと心に誓って教壇に立っています。子どもたちを戦争にかりたてるような教育を再び繰り返してはなりません。 

 

2・4事件を報じた信濃毎日新聞号外
2・4事件を報じた信濃毎日新聞号外

かつて、長野県内に教員への監視と弾圧がありました。1933年、治安維持法に反するとして、230人の教職員を含む608人が摘発されました。教員赤化事件、2・4事件といいます。長野県は満蒙開拓青少年義勇軍に全国一の子どもを送り出しました。その直前にこの事件による教員の弾圧があり、汚名返上のために躍起になって教え子たちを戦場に送り出してしまったのです。

 

71年前、戦争は終わりました。310万人以上の日本人、2000万人を超えるアジア太平洋の人々の命を奪った戦争でした。

 

いつの世も、「平和」「治安」という聞こえのいい言葉で戦争ははじまり、いったんはじまってしまえば、歯止めがきかなくなるのが戦争の本質です。

 この11月から南スーダンPKOへの陸上自衛隊派遣部隊に青森第5普通科連隊が送られることになっており、9月からすでに訓練がはじまっています。新任務として、「駆けつけ警護」と「宿営地共同防衛」が付与され、武器使用も拡大されます。憲法が禁じる海外での武力行使に踏み切ることになり、自衛隊が「殺し、殺される」初めてのケースになります。

 

南スーダンは、7月に300人が、この一週間で60人以上が死亡するなど、紛争状態そのものです。PKO参加5原則が崩壊しています。安倍首相は「戦闘行為ではない、勢力と勢力との衝突」と国会で答弁していますが、南スーダンが安定していると言っているのは、世界中で日本しかありません。

 

青森県の高校の先生は、「貧困に苦しむ生徒たちが多いため、青森は自衛隊員の率が日本一高く、男子生徒は自衛隊に、女子生徒は看護学校に進学している。衣食住まるごと面倒を見てくれるので、国公立大学に不合格した生徒たちに進学先として人気がある。三沢基地のある三沢高校の6%もの生徒が自衛隊に入隊する。なんとしても派兵を阻止したい」と訴えています。

 

子どもと教育を守るために、ごいっしょに力を合わせましょう。憲法9条を生かし、「平和を広げる国」を子どもたちに手渡すために、反対の声をあげ続け、「戦争法」を廃止にしましょう。

「赤紙が届いた?」

全国の学校現場で、中学生・高校生に対する自衛隊による自衛官募集活動がおこなわれ、問題になっています。

 

★高校現場では、長野県内でも高校の校門の前に、自衛隊員が勧誘のチラシを配っていました。高校生の求人解禁日である7月1日には、高校3年生に自衛官募集のダイレクトメールが届き、「赤紙が自分の子どもに届いた」と親たちを恐怖に陥れています。教職員組合で防衛省に要請したところ、住民基本台帳の情報の閲覧によって得た情報だから問題ないと言い張っています。自衛隊の要請に対して応じる義務はないはずですが、全国で3割の自治体が自衛隊に協力してしまっています。

また、自衛隊を職場体験として、演習場の見学や武器に触れさせているという実態もあります。

せまる経済的徴兵制

アメリカ並みの経済的徴兵制の危険性がせまっています。

 

★防衛省には、医歯薬理工系の大学生・大学院生に5万円以上を貸与し、卒業後に自衛官として勤務すれば免除する制度があります。自衛官の応募数が減少傾向にあるなか、防衛省がアメリカ軍の制度を参考に、自衛隊入隊を前提にした奨学金制度を検討しているといわれています。事実、日本の大学の3分の1が日本学生支援機構から奨学金を借りており、大学生の平均の借金は300万円、大学院までで700万円となります。設立当時は無利子だった日本育英会が独立行政法人となり、「官製ローン」「国営ヤミ金」と揶揄されるほどになっています。

 

★日本学生支援機構の評議員は「返済の滞納者は、防衛省にインターンシップをやってもらえば就職はよくなる」と発言しています。

 

★安倍政権は労働者派遣法によって、派遣労働者をさらに増やそうとしていますが、非正規労働では奨学金を返済するゆとりはありません。労働法制改悪により貧困層を意図的につくりだし、自衛隊に送りこむ経済的徴兵への下地となっていることは明らかです。

すすむ教職員への弾圧

学校現場での教職員に対する弾圧もすすんでいます。

 

★6~7月に自民党がHP上で「学校教育における政治的中立性についての実態調査」。政治的中立を逸脱するような不適切な事例をいつ、どこで、誰が、何を、どのように行ったのかについて具体的に記入させました。政権与党が国民に密告を求め、教育に不当に介入するものです。逸脱例として「こどもたちを戦場に送るな」が上がり、批判が集中したため「安保関連法は廃止すべき」に差し替えられましたが、それも削除。事例が集まったとしてこの調査は終わりましたが、公職選挙法に違反する事例は警察へ資料提出すると表明しました。

 

★私たち公務員には憲法を守る義務があります。憲法99条に、憲法尊重擁護義務が規定されているからです。国会議員ももちろん義務があります。政治的中立性に違反しているのはどちらなのか、答えは明らかです。 


長野医療生協の機関紙「みんなの医療」から
長野医療生協の機関紙「みんなの医療」から