内心の自由、言論・表現の自由を侵害する違憲の法案、「共謀罪」。市民の相互監視、密告奨励が横行する

内心の自由、言論・表現の自由を侵害する違憲の法律

「共謀罪」は話し合うことが罪に問われるという、内心の自由、言論・表現の自由を侵害する違憲の法案です。

 

刑罰は「どういうことをしたときに、どういう罰を与えるのか」を明確にして法で定めなければなりません。そうしてできる刑罰は、刑法典だけでなく、税法とか公務員法とか、行政分野の多数の法の中に散りばめられています。ところで、刑事法学の基本原則ですが、被害を発生させる具体的な危険行為(実行行為)をしたときしか処罰してはならないとされています。ただし、実行行為とまではいかないけれども、かなり危険な状況までの行為をしたという場合も処罰する例があります。例えば、放火のためにガソリンを買うとか、人を殺すためにナイフを買ってきたとかいうときです。もし、マッチを使う、ナイフ...を振り回すという実行行為にまで入るとその被害もかなり大きいことが予想されています。そこで、準備行為だけであっても処罰しようというわけです(予備罪の規定)。

 

殺そうと「思った」というだけでは処罰してはなりません。心の中は処罰してはならない。「話し合った」という段階でもそれを処罰しようということは許されません。話し合っただけでは、被害が具体的に緊迫しているとまで言えないからです。話し合って「合意までしたではないか」といっても、まだまだ心の中にあるだけの場合とほとんど区分けができません。そんなものは処罰してはならない。これが「共謀罪」の問題です。

 

人は、日常生活の中で法律に触れる行為を考えたり話しあったりすることがよくあるものです。しかし、話しあい、確認することと、実際に行動することは全く別のことです。冗談ということもあるでしょう。冗談もいえなくなってしまいます。

共謀罪の新設が認められたら、日本の刑法体系は根本からくつがえされることになります。

“暗黒社会は予想しなくていい”という宣伝には要警戒

政府は「共謀罪」の成立要件を従来より絞り込んだ「テロ等組織犯罪準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案に関し、20日召集の通常国会で提出すると報道されています。

ここで注意です。東京オリンピックなどを口実にしながら、“「共謀罪」はテロ、詐欺集団、暴力団に関係することを問題にするだけだ、そんな暗黒社会は予想しなくていい”という宣伝が出てきます。要警戒です。

 

「組織的犯罪集団」か否かの判断等は捜査当局が行うわけです。捜査当局が「こいつらは怪しい」「危険だ」と、にらんだだけで拘束されたり処罰されたりしかねません。大分県警が野党の選挙拠点を隠しカメラで監視していたことが問題になりましたが、「共謀罪」は、捜査当局にさらなる強権を与えることになります。 

市民の相互監視、密告奨励が横行する

さらに、これが大問題です!「共謀すること自体」を犯罪としてしまうのですから、当然、その「共謀」は厳重に摘発し、処罰しようということになっていくでしょう。治安維持の責任をもつ警察は、「共謀があったのではないか」「共謀がないように」という目で市民を監視します。監視をサボっていたら、警察の職務怠慢とされます。

 

刑事訴訟法239 条に、「官吏又は公吏は(公務員のこと)は、職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、(捜査機関に)告発をしなければならない」となっています。「共謀することも犯罪だ」と法律で決めるのですから、「犯罪とする以上は、その共謀の早期発見、監視、捜査の機構を頑丈にしなければならぬ」ということになっていきます。公務員が監視の任務まで負わされるということも、空想ごとではなくなります。

スパイ、おとり捜査も横行することも想定されます。 法案では「共謀した段階で自首した者は処罰しない」といっているからです。おとり捜査に入った者は処罰しない、というわけです。 

私たちの生活から自由や基本的人権がなくなってしまう

秘密保護法で共謀罪の先取りをしました。特定秘密を漏らした公務員は10 年以下の懲役等々、重い刑を定めましたが、それを共謀したものは5年以下の懲役としています(25 条)

 それによれば、特定秘密にアクセスしようとしていくと「共謀」との疑いを掛けられる。「犯罪は摘発しなければならない。共謀はつかみどころもないものだけれども、犯罪と決めたのだから見逃してはならぬ」ということになっていく。そこでは、尾行もいいだろう、盗聴も広く認めていこうとなる。そういう薄気味悪い空気が蔓延します。このように日常的な市民監視が当然とされ、強化されていきます。

昨年5月には盗聴法の改正が成立しました。そして「共謀罪」。これらを組み合わせると、とんでもない市民への弾圧が始まってしまうのではないかと危惧します。

 

安倍政権はいろいろな安保法制をたくらんでいます。そういう中で、例えば「正当な理由なく基地の写真撮影をした者は5年以下の懲役とする」という法ををつくったとしましょう。これは、「長期(刑の上の限界)4年以上の刑を定めている罪」となりますから、自動的にその「共謀」も処罰されることになる。そうなれば、基地撤去の国民運動はどうなるでしょう。軍拡反対の運動は。

このように、こと安保法制に関連して重い刑罰をつくればつくるほどに、共謀罪が連動して当然に増える。それによって、激しい監視社会になっていきます。

私たちの生活には自由や基本的人権もなくなってしまいます。72年前と同じように再び戦争と言う愚かな道へ歩みをはじめてしまいかねません。

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コメント: 1
  • #1

    死神 (水曜日, 17 5月 2017 17:30)

    すでに内心の侵害受けた(警官から)