長野県信濃町にある浄土真宗本願寺派称名寺の梵鐘は、昭和17年、門信徒の手によって戦地に送られました。大砲の弾丸になったとも。門信徒は寺の近くにあった石をそこに吊るしました。70年以上を経たいまも「石の鐘」はそのまま沈黙しています。
供出された梵鐘の代わりに吊るした「石の鐘」は、戦争で二度と帰って来ない命の証ともいえます。
和田登さん作・「石の鐘の物語~いね子の伝言~」が今年7月に、かもがわ出版より発刊されます。映画化された「望郷の鐘」の姉妹編です。舞台は信州南端から北端へ!
作者・和田登さんのメッセージ
石の鐘が静かに語っている
北信濃に称名寺という浄土真宗の寺があります。
その寺の鐘楼には、いまもって、青銅の鐘はなく、大きな石が下がっているだけです。
それはそこのご住職の、かつての戦争への反省と怒りの静かな想いの結晶です。
それは、とりもなおさず、石の鐘自身が、新たな戦争は許してはならないと、無言のうちに、そのメッセージを語っていると言えます。
そのメッセージに、私たちは真摯に耳を傾けなければなりません。
私には聴こえます。
安倍総理が、憲法を無視したうえ、国会の審議・同意をあと回しにして訪米し、これまでの日米安保を大きく飛躍させ、軍事同盟化へと進んでいることを怒らないのかと。
民主主義のルールを破っても、あなたがたは黙って、許すのかと。
そのつけは、子どもや孫たちに負わせることになるぞよと。
歴史をよくみなさい。自分には関係ないよと、目先のことにとらわれていると、あぶないよ。長い望遠鏡をもって、過去や世の行く末を見つめる目をもっていないと。
このごろ、メデイアも真実を報じないようになっているから、それを見抜く眼鏡も、あなたがたは発明したほうがいい。気をつけないと、次のようになる。インドの詩聖、タゴールの詩。
出合いのランプは長く燃えるが、別れには一瞬のうちに消える。
戦争のことをうたっているのではないが、後半に注目しよう。いま、あなたがたが送っている日常の幸せも、戦争になれば、一瞬のうちに消えるのだよ。
「石の鐘」の語りは、まだまだ続きます。
和田登(映画「望郷の鐘」原作、児童文学作家)
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