安保法制のどこが憲法違反なのかを整理してみました(元長野県弁護士会会長・和田清二)

安保法制が憲法違反であるということは明らかです。

 

しかし、ジャーナリズムも、重大問題をごちゃ混ぜにして論じてしまうから、争点がわかりにくくなっています。

整理して論じてみたいと思います。

 

 

日本が武力攻撃を受けているわけでもないのに、同盟軍、米軍が武力を行使している現場に参加していく参戦法

戦争法案の1つは、自衛隊法、周辺事態法、武力攻撃事態法など、これまでにある10の法律をまとめて改変してしまおうという、「まとめ扱い法」。

この中に、重大な「集団的自衛権行使」のことを塗り込んでいます。「集団的自衛権行使」として、日本が武力攻撃を受けているわけでもないのに、同盟軍、米軍が武力を行使している現場に参加していく参戦法。それができるように、自衛隊法などを改変してしまおうというのだから、武力行使、戦争を禁じた憲法9条に反することが明白な法案です。

 

「支援の名を騙る武力行使」

2本目の法案は、それまでは時々の特別立法(海外派兵法)をつくって外国まで出かけていっていたものを、恒久的な一般化法に替えててしまって、海外派兵をしやすいものにしてしまうというものです。

法案の名称は「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律」としています。

昨年7月1日の閣議決定で、「国際社会の平和と安定への一層の貢献」などといい、さらに、「 政府としては、従来の「後方地域」あるいはいわゆる「非戦闘地域」といった自衛隊が活動する範囲をおよそ武力の行使と一体化の問題が生じない地域に一律に区切る枠組みではなく、他国が「現に戦闘行為を行っている現場」ではない場所で実施する補給、輸送などの我が国の支援活動については、当該他国の「武力の行使と一体化」するものではないという認識を基本とした考え方に立って、我が国の安全の確保や国際社会の平和と安定のために活動する他国軍隊に対して、必要な支援活動を実施できるようにするための法整備を進める」といっていたものを、法案にしてきたものです。

これは、「集団的自衛権行使」とは別個の、憲法9条違反です。

「戦闘の現場」以外ならばどこでも、どこにでも行って、他国軍隊に弾薬提供までするといっているのだから、憲法で禁止している「武力の行使」と一体化するわけで、「支援の名を騙る武力行使」そのもの。

憲法9条は、この「武力行使との一体化」も禁じています。

 

「国連の決議」にかかわる問題について

なるほど法案には「国連の決議があったときにだけ支援に行く」などとも書いてあります。しかし、その「国連の決議」の中味が、またまた問題です。

要するに、国連決議で「諸国で軍事行動をとろう」といったときだけでなく、一定国を非難したうえで「諸国でしかるべき取り組みをすべき」といった決議の程度でも、この軍事的支援に出かけることを可能とする「国連の決議」にしてしまう。

「国連の決議」をテコとして使いながら、すでに軍事行動に走った米軍の支援に出ることにノーと言えない、言わない危険はかなり強い。歴史が語るところで、この間の国会の答弁でも露呈した問題です。

 元長野県弁護士会会長・和田清二