毎月19日の長野市のアクション、2016年8月19日は映画「望郷の鐘」原作者の和田登さん(長野市在住)から「山本慈昭さんの精神を受け継ごう」というメッセージをいただきました。映画「望郷の鐘」の主人公の山本慈昭さんは、長野県下伊那郡阿智村の出身。みずからも満州で過酷な体験にあいながらも、生涯を中国残留孤児たちの肉親探しにささげ、献身的な愛で支えました。
山本慈昭さんの精神を受け継ごう
現代は、世界各地での紛争や戦争、テロなどが話題にのぼらない日がないほどになってきています。
そのような様相に地球上がおおわれてきている理由の一つに、経済のグローバル化があげられます。グローバル化してくるにつれ、自国の経済エゴイズムにおちいり、ナショナリズムが勢いづいてきます。
自国の繁栄のためには、他国や異民族のことなどかまっていられるか、といった風潮に陥っているのです。
そうしたなか、日本の安倍総理は、「歴史と謙虚に向き合い」と、全国戦没者追悼式典で述べていましたが、私には虚言としか思えませんでした。
「積極的平和主義」をとなえつつ、それに反する武器輸出に熱心な姿は異様に感じられます。兵器産業で落ち込んだアベノミクスを挽回しようとするのでしょうか。
なお、過去の日本の犯した醜い歴史についても、教育現場やメディアには隠ぺいをしいる戦後最も危険な総理です。けれど、それを支える組織勢力が多数存在します。組織以外でも、歴史について正しい知識をもたない世代が育っており、このままいくと、ますます日本式のナショナリズムが頭角を現し、また戦争へと向かいかねません。
それを思うと、中国残留孤児の父と言われ、多くのみなさんがご存じの山本慈昭さんの精神を思い出します。満蒙開拓で犠牲になった大陸に眠る人々の遺骨拾集よりも、平岡ダム工事に連行され犠牲になった中国の人々の遺骨を拾集し慰霊することの方が先だと、決心したその精神です。
それは当時の国策にのせられ、大陸侵略の片棒をかついでしまった痛烈な反省からきております。慈昭さんの頭のなかには、異国で亡くなった中国人労働者たちの家族や友人・知人の嘆き、悲しみを思う想像力がありました。
私たちが現在、最も欠けているのは、よその国や異民族に対する想像力ではないでしょうか。そして、顔を合わせて語り合うことによって、異民族や、他国間どうし戦争を回避できるという確信です。その確信は、歴史を学ぶことから得られる知恵によって生まれます。
最後に、もういちど繰り返します。山本慈昭さんの精神を受け継ごうではありませんか。
2016年8月15日記 和田登(映画「望郷の鐘」原作、児童文学作家)
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