自衛官募集問題と地方自治

私たちの知らないうちに、自衛隊員募集のために自治体から自衛隊へ対象年齢の若者の名簿が提出されるようになっています。44市町村と地元紙で報じられています。

そして今回、安倍首相が「自治体の6割が協力していない」発言から、その提出の方法や有無を変える自治体が出ています。

 

長野県ではそういった名簿提出の状況を気にした市民が市町村へ問い合わせを行っています。

 

昨年自衛隊の募集年齢の上限が27歳から33歳に引き上げになり名簿の書き写しが手間だとして紙での提出に切り替えたのは千曲市です。

問い合わせの際、もし市民から名簿提出はやめて欲しいと声が上がったらどのように対応するかとの質問に担当職員は「意見が出た以上は市長交えて話をする」との回答がありました。

 

長野市も紙で「提供」し、それを慣例として議会で問題提起されなければ公にもしていません。又、父母から子どもの個人情報を防衛省に提出しないで欲しいと言われたらどうするかという質問に、「提出をしないということは出来ない」という姿勢で、今後も提出しつづける方針だそうです。

 

自治体の持っている情報は自治体の物ではなく私達個人の物です。

私たち個人の情報に対して市民からの声が上がってもそれを無視する姿勢は本来の地方自治の在り方に背いています。

 

2015年の安保関連法から自衛隊の希望者数は明らかに減少し、防衛省も募集には非常に苦戦している背景があり、より強化されていく実態があります。

ある転職サイトには「意外においしい国家公務員」と自衛隊員の募集があり、お金が貯めやすい、や、国家公務員に興味があるならオトクな選択です、などと書かれています。

しかし、今の日本の貧困問題の山積する中、もし募集名簿の情報にその家庭の所得や生活保護状況などが入っていたらどうでしょうか。形を変え、戦争に参加する自衛隊へ貧困家庭の子どもをリクルートすることはアメリカが行ってきた「経済的徴兵」そのものです。

 

そもそも地方自治とは何でしょう。国と切り離されその地域の独自の政策を市民で考えていくものです。そしてそれは第二次世界大戦の大きな反省の証でもあります。ここ長野県では国策に加担した市町村が満蒙開拓団に力を注いだ結果大変悲惨な結果を生みました。全国第一位の犠牲を出した長野県ではこの地方分権の意味は特に県政、市政に反映し引き継いでいかなければならないのです。

 

けれど現状はどうでしょうか。各地の市長村選挙、市町村議会選挙、県知事選挙でさえも投票率は過半数またはそれを下回ります。

今回の県議会選挙では50%を切る投票率の中で決まり、さらに自民党県議団の議席が過半数を決めました。今国会では自民党が2/3の議席を占め安倍首相筆頭に独裁で強引な施策がどんどん進められてきています。地方分離が曖昧で国からの圧力に忖度しているようでは今後県政は更に国と同化していく恐れがあります。

 

自分たちのことは自分たちで決める。何がおかしいのか、問題点はないのか考える。言われたことをただやるのではなく、まず話し合う。こんな小学校でも子どもたちがやっていることをやれていないのが大人の世界です。今の国の行いを、地方がそのままに受けてやっていれば、いつか第二次世界大戦のような過ちが起きるでしょう。

 

名簿提出について東御市では、議会で問題になり、防衛省は法令に基づいて名簿の提供を求める事は出来るが、地方自治体に提供する義務のないこと、そして東御市は国のいう通りに追随するのか?と指摘。法解釈と情勢の2点から指摘された担当者は即答できず、名簿の提供はいったん「保留」となりました。

 

地域の人の意見を聞きながら地域で決めていく。

問題が出れば一旦止めてでも話しあう。

これが地方自治の本来の形です。

そして私たち市民は国を見て、県政を見て、市町村の政策を見て、考えて行動していく時だと思います。ただ国の言うなりになっていないか。

地域に住む人の意見を聞ける自治体なのか。

動かしていけるのも、また私たち市民です。