高校現場の実態から自衛官募集問題を考える(高校教員のY先生)

トイーゴ前をご通行中のみなさん、しばらくの間お耳をおかしください。わたしは、県内高校の教員のひとりとして発言をさせていただきます。教え子たちを徴兵制で戦場に駆り立てられる、そんな日本にしたくない思いを、訴えさせていただきます。

 

安倍首相は2月10日の自民党大会で、「自衛官募集について都道府県の6割以上が協力を拒否している」として、「自衛隊を憲法に明記することによってそういう空気は大きくかわっていく」「違憲論争に終止符をうつ」と発言し、9条改憲をすすめる姿勢を示しています。

昨日3月17日の防衛大卒業式訓示でも、「いままでとは抜本的に異なる速度で改革を推し進めていく」と述べ、大軍拡路線の方針を強調しました。

 

これまでも高校現場では7月1日に高校3年生の自宅に、突然自衛隊から募集の通知が来て、「まるで自分の子供に召集令状が来たようで不安だ」「なぜ自分の個人情報が自衛隊に流れたのか」と懸念の声が上がっていました。

 全国の調査では、自衛隊の強引な勧誘の問題が明らかになっています。

・「突然家庭訪問され、強引に応募書類に記入、写真も撮影されその場で提出させられた。」

・「警察官を受験しようとする生徒に強引に自衛隊受験を薦めてきた」

・「卒業生の自衛隊員が家庭訪問してきて、個人情報を収集している」

・「解禁の7月1日以前に駅前で勧誘を受けた」

・「通行中に声をかけられた」

・さらに、試験については、「眼の検査のときに下着1枚で受けさせられた」「身体検査で下着の中まで確認された」などという、生徒たちの人権を無視したひどい勧誘や試験が行われているのが実態です。

 

さて、そもそも、皆さんは自衛隊に個人情報が流れていたこの問題をご存知ですか?

卒業を控える18歳と22歳になる若者の「氏名、生年月日、性別、住所」という4つの情報を、これまでは市町村が自衛隊に「住民基本台帳で閲覧・転記」をさせていたのです。

しかし、昨年5月に防衛大臣が「依頼文」で「紙媒体または電子媒体での提供」を求めてきました。全国の市町村で提供している数は、紙媒体が618、シールでの提供は京都市など4自治体。紙媒体での提供は兵庫県姫路市など14自治体に上ります。

安倍首相が「都道府県の6割が拒否している」というのは明らかに間違いです。実際は、全国1741市区町村のうち、名簿提供は36%(632市区町村)、53%にあたる931自治体は住民基本台帳の閲覧を認めています。つまり、市町村の4割がデータ提出、さらに閲覧転記を認めているのは9割にも上っています。完全に拒否しているのはわずか1%にしかすぎないことを岩屋防衛大臣も認めています。

 

自衛隊の入隊募集にかかわっては、自衛隊法第97条は、地方自治体が「募集に関する事務の一部を行う」としていますが、同施行令第120条は、地方自治体に「資料の提出を求めることができる」としているのみで、そもそも自治体が応じる義務はありません。これまで政府は「こたえられないということであれば致し方ない」(石破元防衛庁長官)としていました。本人の同意なしに、住民基本台帳に記載された個人情報を、自衛隊に提供することは、個人情報保護やプライバシー権を保障する観点からも許されません。5割の地方自治体が住民基本台帳の閲覧はみとめていても、電子・紙媒体での名簿提供に応じていないのは当然です。自治体への協力強要は自治体の自立性を侵すものであり、地方自治の否定といえます。

もとより、国連が採択した「武力紛争における児童の権利条約 選択議定書」(「武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書」2000年国連総会採択、2004年5月国会承認)でも、18歳未満の少年兵を禁じています。文科省・厚労省から出された中高生の就職に関する通知(「2020年3月新規中学校・高等学校卒業者の就職に係る推薦及び選考開始日等並びに文書募集開始時期等について<通知>」では、「応募の受付は学校又は安定所を通じて行うこと」としています。中学生であれ、高校生であれ文書による募集は厚労省・文科省の通知で禁止されています。その趣旨からも、自衛隊への個人情報の提供を自治体に強要することは許されません。

 

この問題の背景には、安保法制定後、海外での武力行使の危険性が高まるもとで自衛官への応募が募集数に満たない実態があります。昨日3月17日に防衛大卒業式がありましたが、卒業生478人のうち、任官辞退者は49人と昨年度から11人も増え、戦争法が成立した2015年度の47人を上回り、過去10年で最多の辞退者となっています。

 

こうした中、自民党大会での安倍首相の演説を受けて、2月14日には自民党国会議員に募集名簿提出を地元市町村にうながすよう通達も出されています。全国各地で名簿提供の動きが相次いでいます。官邸の地方への圧力ともうけとれます。政府の意に反する自治体への不当な弾圧を見過ごすことはできません。

9条に自衛隊が明記されてしまえば、自衛隊への個人情報提供が地方自治体に義務つけられる危険性もあります。国と自治体は対等とする戦後地方政治が破壊され、国の行う徴兵制と戦争の下請け機関とされる危険性があります。そのため、戦争する国つくりに自治体まるごと協力させ、青年を戦場に駆り出そうとするものです。

地方自治や人権よりも、自衛隊を上におく安倍首相の姿勢は大変危険なものです。国の言う通りに追随していたら、自治体は、戦争荷担の、侵略の先兵になってしまう。これが満蒙開拓団に多くの人々を送り込んだ長野県、市町村の教訓です。長野県については、自衛隊長野地方協力本部(長野市)によると、長野県内77市町村のうち、18年度に紙媒体で提供したのは44市町村、閲覧や書き写しを認めたのは33市町村で、全ての市町村が協力している」(信濃毎日新聞2月17日) 状態です。今後、広がらないように訴えていく必要があります。

 

全国では、自衛隊への個人情報提供に対する市民ぐるみの反対運動が広がっています。

これまで名簿を提出していた神奈川県葉山町の山梨崇仁町長は3月14日「(法的根拠とした自衛隊法や住民基本台帳の)法令解釈に不明瞭な点がある」とし提出を取りやめる考えを示しました。

 

だまっていたら、賛成したものとされてしまいます。ぜひみなさんもともに反対の声をあげましょう。そして来る統一地方選挙で、1票を投じ、わたしたちの民意を表明しようではありませんか。

教え子を再び戦場に送らない固い決意のもと、地方自治体に対する自衛官募集への協力強要を許さず、9条阻止に全力でとりくむ決意です。

以上、発言とさせていただきます。ともにがんばりましょう。

自治体に問い合わせをしたり、名簿を提出しないでほしいと訴えよう(長野市19アクション)

自衛官募集問題、先ほど吉田先生がくわしくおはなしされました。いま、自分の住んでいるところはどうなっているのか?と自治体や議員に問い合わせる動きが広がっています。県内で長野市や千曲市など44市町村で紙媒体で若者名簿を自衛隊に提供しています。法的根拠はある、といいます。はたして法的根拠はあるんでしょうか。

 

さきほど吉田先生も紹介された神奈川県葉山町(はやままち)では、自衛隊法などを列挙して、条例には個人情報の利用や提供に制限があるが、ただし書きで法令の定めがあるときは除外されていることから、法令に基づく対応と判断して、若者名簿を提供していました。

安倍首相の「6割以上の自治体が協力を拒否している」という発言をうけて、個人情報保護の観点から提出を疑問視する声が議会側から上がり、町は「対応を再検討する」と回答していました。3月14日の本会議で、検討結果を問われた町長は「昨今の報道でも、名簿提出の際、法令解釈に不明瞭な点があるとの認識を新たにした」と説明。「提出しないことが、現行法令の解釈の明確な範疇と考えている」としました。

 

長野県東御市では「閲覧」で対応していたものを、事務作業軽減のために名簿を紙で「提供」して欲しいと通達があり、東御市は、対象者を抽出し名簿作成作業を既に行い「提供」の準備をしていました。平林千秋市議がこの3月議会で、防衛省は法令に基づいて名簿の提供を求める事は出来るが、地方自治体に提供する義務はない、東御市は国のいう通りに追随するのか?ということも指摘。名簿の「提供」は、いったん「保留」となりました。

 

あなたの自治体はどうですか?私たち市民の守られたいプライバシーを守ってくれる自治体ですか?

今の政府がやっていることは沖縄を見れば一目瞭然です。自治体へ圧力をかける。県民投票で示した思いを無視する。そのような様子を見て、きっと他の市町村、都道府県は「同じようになったら怖い」とビクビクしているはずです。

私たち市民は何ができるでしょうか。

そんな時だからこそ市民がやれることがあると思うのです。自治体に問い合わせをしたり、名簿を提出しないで欲しいと訴えることができます。

自治体だけでは決められないことも市民が後ろ楯となって、意見を増やし、議員さんへ届けたりできると思うのです。

自分の住む自治体に、自治体が頑張れるよう後押しすること、そしてそんな市民の声をしっかり受け止め反映できる議員を選挙で選ぶこともできます。

私たちもできることから始めます。