対話を重ねて「良心の自由」を育てる

「私はこう思う、あなたはどうですか?」という角度を大切にして取り組んでいる学習会は、2018年9月には、長野県を越えて岐阜県多治見市でもおこなわれました。根底にある問題意識は、以前、信濃毎日新聞に取材を受けて論説で紹介された「対話を重ねて『良心』の自由を育む」ということです。世界の多くで当たり前の自由なのですが、日本では憲法でわざわざ定められている「思想・良心の自由(内心の自由)」。現代の日本社会においても侵されやすいものとして見るべきだと思います。自分が、いい、やりたい、と思ったことは、縛られず、忖度もせず、のびのびと考えていいのです。

信濃毎日新聞2017年元旦の論説から

“「与えられたことしかできない子が多い」「学力テスト偏重では…」「社会に結び付かない学力をつけてどうなるのか」。危機感や悩みを共有しつつも出口は見えない。一人の母親が言った。

「私たちお母さんの多くは国からの指示を待っている」”

 

“戦後の民主主義教育では教える価値観や内容は変わっても、教師が権威を背にして子どもに向き合う構造は残された。

何が正しいか、親も子も自ら考える土壌が十分育たなかった。親は責任ばかり求められ、追い詰められる。そこに国家が示す「正しい道」は染み込みやすい。

判断の物差しである「良心」は一人一人が自ら学び取ってこそ多様な価値観を育み、民主主義の土台を強くする。憲法19条は<思想及び良心の自由は、これを侵してはならない>とする。

勉強会の母親の問題意識は「良心の危機」に通じるものがある。”

 

“北信のお母さんたちの勉強会ではユネスコの学習権宣言(1985年)も学んだ。

学習権とは<問い続け、深く考える権利であり…自分自身の世界を読み取り、歴史をつづる権利である>と書いている。

自分を見つめ直し、社会との関わりを考える。それは自画像を描く営みにも通じる。

親も教師も日常の忙しさに追われ、孤立しがちだ。子どもを中心にあちこちで小さな対話の輪ができるといい。憲法施行70年の年の初めに描く希望である。”

(丸山貢一論説主幹)