上田市・Xmasけんぽうカフェ「そもそも立憲主義ってなあに?」まとめ(講師:岡田和枝弁護士)

いまの憲法は、個人の幸福のための、個人の尊厳を守るための、政治をしなさい、法律をつくりなさいと決めています(憲法13条)。そのために、「国民主権」があり、「基本的人権」があり、「平和主義」があります。憲法13条に照らし、暮らしや社会がどうなっているかを見ることは、憲法的な視点のトレーニングになります。「国のかたち」を選び、決めるのは主権者の国民ですが、それは個人の権利がきちんと守られてこそ。そんな思いで13条を、そして憲法そのものを読み直してみましょう。

  

 〇立憲主義と言う言葉について

・ここ数年で広まってきた。10年くらい前は司法試験を受ける人が知っているくらい。出てきた背景は安保法制。

・集団的自衛権行使を認める人は個人ではいるがそれを政府、国会が認めたことは立憲主義に反している。だから個人としては賛成もいる日弁連も反対をした。

・憲法が国家権力よりも上にあり、権力は縛られている。その枠の中では個人や政党でも考えは違っていてもよい が、枠を外れて法律などを作ってはいけない。

・しかも憲法改正をしてから行うのであれば反していないが、その土俵(今の憲法の中)を出てしまったことが問題

 

〇9条に自衛隊を明記する、ということについて

・安保法制で檻から出てしまった自衛隊。違憲と言われているので檻を広げて出ていないようにすることになる。つまり自由エリアが決められている私たち国民の自由の範囲がその分狭くなるということ

・「自衛隊」という名の「軍隊」として海外派兵や武力行使が合憲的に行われるようになります。法律の世界では「後から作った法律は、前の法律に優先する」ことが一般原則とされます。今までの9条2項は自衛隊の明記に優先され、無いに等しくなる。

・自衛隊員の命は9条によって護られてきました。安倍首相や日本会議のいう、自衛隊の名誉のために9条に明記する、というのは自衛隊員の命とひきかえにするということに。自衛隊員の命と名誉、どっちが大切?

 

〇緊急事態条項

・憲法の檻に小さな扉をつけることになる。普段は大丈夫だよ、でもカギはライオンが持っていて何かあったらでていくよ と言っている。

・ワイマール憲法(ドイツ)では自由権や社会権がありながらも緊急事態条項があり、そこから独裁政治に結びついていった

・自民党改憲草案では緊急事態が発令したら檻から出たライオンが檻に戻ってこなければいけない日数は決まっていない。今3匹いるライオン(司法、行政、国会)のライオンは行政の1匹になる(司法や国会は無力化、行政の独裁)

・今までも震災(東北大地震や九州の地震など)にかこつけて何度も出てきた緊急事態条項だが、地震などの震災は対応できる法律がすでにある

 

〇安倍改憲の目的は??

・9条→戦力の例外として自衛隊を憲法に明記することで戦力の合憲化。

・その結果、平和憲法から戦争憲法になり緊急事態条項は必要。戦争する国には必要な法律=9条改憲+緊急事態条項はセット

・9条改憲の後には必ず2回目の改憲が行われるはず、または一括改憲?

・戦争できる国は軍隊を裁く裁判、軍法会議が必要になりそのための加憲、法律もどんどん変わってくることが予想される。当然税金の使い方も武器購入や維持費用に必要になり今との比重が変わる

 

〇誰が軍人になるのか

・今は自衛隊は災害救助などの任務があるが、軍人としての自衛隊となったときに成り手がいなかったら?

・今は苦役はだめなので徴兵はない。が、憲法に書かれたら「苦」じゃなくなる?

・社会保障費を変えていけば生活が苦しくなる人もいる。学費や医療保険など。

・格差社会に直結する問題になってくる

 

〇「あんなに頑張っている自衛隊が違憲と言われているのは可哀想」という言い方をする人がいるが

・違憲といわれている→そもそも司法は自衛隊を合憲としてきているのが現状

可哀想→違憲であることを国民が「可哀想」と思ってはいけない 憲法は権力を縛るものである

自衛隊が可哀想→憲法改正で明記され事実上の軍隊となった方が可哀想ではないか?

 

〇国民投票(法)の問題

個別投票か一括投票かは国会が決めて良いとされている

・一括投票の場合、教育費は無償化が良いな、でも9条は変えたくないなと思う人にとって、反対すると全てが反対になるので賛成を生かしたいとなり、賛成に投票する心理が生まれる。

・教育費の無償化は憲法を変えなくてもできる。今の憲法の檻の範囲内のこと。今無償化にしても憲法違反にはならない。

・医療費の子どもの無償化の動きがあるが、これは憲法改正の話になどなっていない。なぜ教育費無償化だけ憲法改正が必要なのか?

・最低投票率が決まっていない。有効投票率の過半数で決まる→投票率20%でも10%以上賛成だったら改憲される

・有効投票率の過半数であれば→無投票は「賛成」に投じていると一緒になる

  

 〇公共の福祉と公の秩序

・公共の福祉と公の秩序は全く別物

・公共の福祉=自由な国民と自由な国民の自由がぶつからないように調整するもの

であり刑法や民法。なんでも自由ではなく人権を侵害しないように。

 ・公の秩序=何が秩序なのかを誰かが決める

  

〇憲法は暮らしや社会に直結する

政治家や企業のモラルが低下し、世の中が乱れている原因の一つは、憲法を踏みにじったり、無視しているから。もっと好き勝手にふるまいたいために、憲法を変えたくてしかたがない。

安倍首相や日本会議など憲法改正を叫ぶ方々は、ある意味、憲法が暮らしや社会の形を作っていること、憲法が暮らしや社会に直結していることを理解している。憲法が変われば、今の社会が変わることを知っている。だからこそ変えたい。

その意味で、彼らは憲法の本質を知っている。

自由を縛られている側の方が、憲法のしがらみを感じるからではないか。

私たちは、今の憲法が活かされているからこその政治や社会の側面をもっと認識し、評価すべきではないか。

こういう法律、こういう制度は、憲法○条の趣旨を実現したものですという評価や、さらにこういう制度に変えたり、こういう制度を作ると憲法○条の趣旨をより活かせるのではないか、という議論の仕方が必要ではないか。

信じられないことかもしれないが、戦前戦中は天気予報も軍事機密だった。